「処遇改善加算は介護職員だけに配るもの」「加算率と同じ割合で全員を昇給させるもの」と思われがちですが、どちらも正確ではありません。2026年度の正式通知とQ&Aを基に、対象にできる職種、使える賃金項目、職員説明と記録の実務を整理します。
この記事が役立つ方
対象処遇改善加算の配分対象と支給方法を決める介護事業所
困りごと誰に、どの賃金項目で、どの程度配れば実績報告まで合うか迷っている
読後にできること対象者・支給方法・説明根拠を整理し、毎月の加算額と賃金改善額を照合できる
この記事のポイント
- 加算算定事業所では、看護職・リハ職・ケアマネ・調理員・事務職なども配分対象にできます
- 加算額以上の賃金改善が必要で、基本給・手当・賞与のどれを使うかは算定区分も踏まえて設計します
- 柔軟な配分は認められますが、勤務実態に合わない著しい偏りを避け、職員への周知と根拠記録を残します
配分は「金額→対象→方法→証拠」の順で決める
加算額を確認算定額・必要な賃金改善額
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対象者を整理職種・雇用形態・兼務割合
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支給方法を設計基本給・手当・賞与
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周知・記録実績照合まで残す
図1:毎月、加算額と賃金改善額の差額を確認します。
配分対象は「介護職員だけ」ではない
2026年度Q&Aは、加算を算定する事業所内で柔軟な配分を認め、介護職員以外の全職種も対象になり得るとしています。例示されているのは、医師、看護師、リハビリ職、介護支援専門員、生活相談員、栄養士、調理員、事務職などです。
配分対象にできる職員と確認事項
| 職員の区分 | 基本的な取扱い | 実務で確認すること |
| 算定事業所の介護職員・その他職種 | 配分対象にできる | 職務、勤務実態、配分基準 |
| 派遣職員 | 対象にできる | 派遣元と協議し、派遣料金の上乗せが本人の給与改善につながること |
| 法人本部の職員 | 算定事業所の業務を行う場合は対象にできる | 担当業務と算定事業所との関係 |
| 非算定事業所だけに従事する職員 | 加算原資の配分対象にできない | 兼務がある場合は業務実態を整理 |
対象にできることと、全員へ同額を配ることは別です。職務と勤務実態に合う基準を決めます。
対象にできることと、必ず全員へ同額を配ることは別です。介護職員、特に経験・技能のある介護職員の処遇改善が重要である点にも留意しながら、事業所の職務構成に合う基準を決めます。
基本給・手当・賞与のどれに使えるか
賃金改善には基本給、手当、賞与を使えます。賃金改善に伴って増えた社会保険料等の事業主負担分も含められますが、退職手当は対象外です。また、算定区分によっては、一定額を基本給または決まって毎月支払われる手当に充てる月額賃金改善要件があります。「年度末に全額を賞与で払えばよい」とは限りません。
新たに増加した加算額に相当する賃金改善は、新たな賃上げとして実施し、ベースアップを基本とします。ただし、賃金体系の整備途中など、ベースアップだけでは難しい場合は手当や一時金を組み合わせることも認められています。
柔軟な配分と「著しく偏った配分」の違い
配分は事業者の判断で柔軟に決められますが、一部の職員や一部の事業所だけへ、職務や勤務実態に見合わない形で集中させることはできません。配分基準には、職位、資格、勤務時間、担当業務、評価など、職員に説明できる要素を用います。
さらに、賃金改善の方法を職員へ周知し、照会があれば書面を用いるなど分かりやすく回答する必要があります。「誰がいくらもらったか」を全員に公開する必要はありませんが、自分の支給額がどの基準で決まったかは説明できる状態にします。
毎月残したい5つの記録
毎月残す5つの記録
- 国保連から支払われた加算額と対象月
- 職員別の賃金改善額と支給項目
- 賃金改善に伴う法定福利費の増加額
- 計画額と実績額の差額、その翌月以降の調整
- 配分基準、職員への周知資料、照会への回答記録
「加算収入」と「実際の賃金改善」を別の台帳で管理し、月ごとに突き合わせます。
加算率は介護報酬の対象単位数に掛ける率であり、職員個人の昇給率ではありません。給与計算では「加算収入」と「実際の賃金改善」を別の台帳で管理し、月ごとに突き合わせると年度末の不足を防げます。
ここは自社だけで判断しないほうがよい
配分できる範囲と、労務上安全な配り方は同じではありません
本部職員・派遣職員・兼務者への配分算定事業所との関係、実際の担当業務、派遣元との協議内容を確認します。
賞与だけで全額を支給する算定区分ごとの月額賃金改善要件を確認し、基本給・手当との組合せを決めます。
既存手当を下げて付け替える加算の届出とは別に、不利益変更と賃金水準低下の問題を確認します。
よくある質問
- 事務職や看護職にも配分できますか?
- 加算を算定する事業所に勤務する職員であれば、介護職員以外の看護職、リハビリ職、ケアマネジャー、調理員、事務職なども配分対象に含めることができます。ただし、職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分はできません。
- 加算額を全額賞与で支給できますか?
- 賃金改善には賞与も使えますが、算定区分によっては基本給または決まって毎月支払われる手当に充てる月額賃金改善要件があります。賞与だけでよいと一律には判断できないため、算定区分と計画書を確認してください。
- 既存の手当を下げて処遇改善手当に付け替えてもよいですか?
- 加算による賃金改善とは別の部分で賃金水準を低下させないことが原則です。個々の職員の不利益変更には労働法上の検討も必要であり、加算の届出だけで自由に変更できるわけではありません。
配分設計で、まず行う3手
- 算定事業所ごとに職員の所属・職務・勤務実態・兼務割合を整理する
- 加算見込額と算定区分を確認し、基本給・手当・賞与の配分を試算する
- 配分基準を職員へ説明し、毎月の加算額と賃金改善額を照合する
当事務所のサポート
みなの社会保険労務士事務所では、職員区分の整理、配分シミュレーション、給与項目の設計、賃金規程・職員説明文の整備、毎月の加算額と給与実績の照合まで支援します。「今の配り方で実績報告まで合うか」を確認したい段階でも構いません。まずは現在の計画書と給与台帳をもとにご相談ください。
参考となる公式情報
企画の参考にした民間解説
※ 2026年7月28日時点の公式情報を確認しています。制度は改正されることがあります。手続き・金額・期限は、上記の公式情報や管轄窓口で最新の内容をご確認ください。