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労務トラブル

無断欠勤で連絡が取れない従業員への対応|解雇を急ぐ前の手順

従業員が出勤せず、電話にもLINEにも応答がない。現場は回らないし、本人の身に何かあったのかも分からない。このとき一番やってはいけないのが、感情のまま「もう解雇だ」と決めてしまうことです。順序を誤ると、後から解雇の効力を争われたり、未払いを主張されたりする種になります。この記事は、安否確認から退職・解雇、給与と保険の事後処理までを、実際に動く順番で整理します。

この記事が役立つ方

対象従業員と数日連絡が取れず、対応に迷っている中小企業の経営者
困りごと解雇してよいのか、給与や社会保険の処理をどうするのか判断できない
読後にできること安否確認から退職・解雇までの順序と、やってはいけないことが分かる

この記事のポイント

  • 最初にやるのは解雇の検討ではなく、安否確認とその記録。事故・急病・メンタル不調の可能性を先に消す
  • 出口は「本人と連絡がついて合意」「就業規則の自然退職規定」「解雇」の3つ。どれになるかは規定と記録で決まる
  • 予告なしの解雇には、事業場を管轄する労働基準監督署の「解雇予告除外認定」前提になる

最初の数日:安否確認と記録がすべての土台

無断欠勤の初動は、処分の検討ではなく安否確認です。単なる無断欠勤に見えて、実際には交通事故、急病、一人暮らしの自宅での倒れ込み、メンタル不調による出社困難だったという例は珍しくありません。ここで会社が確認を尽くしたかどうかは、後の退職・解雇の効力にも、会社の安全配慮の姿勢としても効いてきます。

確認は段階を踏みます。本人の携帯電話とメール・LINE、次に入社時に届け出られた緊急連絡先や家族、それでも取れなければ自宅を訪ねます。訪問時は1人で行かず、日時・呼び鈴への応答・郵便物や電気メーターの様子をメモに残します。安否が強く懸念される場合は、家族と連携して警察に相談します。

そしてすべての連絡を記録しますいつ・誰が・どの手段で連絡し、応答がなかったか。電話は発信履歴を、メール・LINEは画面を保存します。後述する退職・解雇のどの出口を選んでも、この記録が土台になります。

図1 安否確認は段階を踏み、すべて記録する

本人へ電話・メール・LINE。発信履歴と画面を保存
緊急連絡先へ家族・身元保証人に状況を確認
自宅訪問2人以上で。様子をメモ。懸念が強ければ家族と警察へ相談
「連絡が取れない」を証明できるのは会社側の記録だけです。

就業規則のどこを見るか

安否確認と並行して、就業規則2か所を確認します。ここに何が書いてあるかで、選べる出口が変わります。

1つ目は退職事由の規定です。「無断欠勤が続き、会社が所在を知らないまま○日を経過したときは退職とする」という、いわゆる自然退職(当然退職)の定めがあるかどうか。この規定があれば、解雇という強い手段によらずに雇用契約を終える道が開けます。2つ目は解雇事由・懲戒事由の規定です。「正当な理由のない無断欠勤が○日以上に及んだとき」が普通解雇・懲戒解雇の事由に挙がっているかを確認します。

どちらの規定もない、あるいは就業規則自体がないという会社は、この場面で打てる手が大きく制限されます。今回の対応と並行して、就業規則の整備を進めることを強くおすすめします。

図2 就業規則で確認する2つの規定

自然退職の規定「無断欠勤○日で退職とする」。解雇によらない出口の根拠になる
解雇事由の規定「正当な理由のない無断欠勤○日以上」。解雇を選ぶ場合の根拠になる
規定の日数と、実際の欠勤日数・督促の記録を突き合わせます。

出口は3つ:合意・自然退職・解雇

初動を終えた後の出口は、大きく3つに分かれます。

1つ目は、本人と連絡がついた場合です。事情を聞き、復職か退職かを本人の意思で決めてもらいます。メンタル不調が背景にある場合は、いきなり処分に進まず、受診や休職制度の利用を先に検討します。退職となる場合は、退職届か退職合意書を必ず書面で残します。

2つ目は、自然退職の規定による退職です。就業規則に定めた日数が経過し、会社が督促を尽くした記録があるなら、規定に基づいて退職として扱います。この場合も、退職扱いとする旨の通知を本人の最後の住所へ書面(配達記録の残る方法)送り、送った事実を残します。

3つ目が解雇です。解雇は相手に意思表示が到達して初めて効力が生じます。連絡が取れない相手への解雇通知は、届いたことをどう確保するかという問題が常について回ります。所在がまったく分からない場合の公示による意思表示という方法は裁判所の手続きになるため、ここから先は弁護士と連携して進める領域です。

図3 3つの出口と、それぞれの根拠

①本人と合意復職または退職。書面で残す。メンタル不調なら処分より受診・休職が先
②自然退職就業規則の規定+督促の記録+書面通知。解雇によらない終了
③解雇規定・記録に加えて意思表示の到達が必要。予告なしなら監督署の認定が前提
①に近いほど争いになりにくい出口です。③を選ぶ前に②の規定がないかを確認します。

解雇予告除外認定:富山では4署のどこに出すか

解雇を選ぶ場合、原則として30日前の予告か、30日分以上の解雇予告手当が必要です。無断欠勤を理由に予告も手当もなしで即時解雇するには、労働者の責めに帰すべき事由について、事業場を管轄する労働基準監督署長の解雇予告除外認定受けることが前提になります。

認定の基準について行政通達は、原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合を、認定すべき事例のひとつとして挙げています。つまり「何日休んだか」だけでなく、「会社が出勤を促した記録があるか」が見られます。認定には申請から日数がかかり、認定を受けずに即時解雇へ進むと解雇予告手当の支払いを求められることになるため、順序はかならず認定が先です。

申請先は会社の本社ではなく事業場の所在地を管轄するです。富山県内は富山・高岡・魚津・砺波の4署に分かれており、管轄の市町村は富山の労務手続き窓口一覧確認できます。たとえば氷見市の事業場なら高岡署、滑川市なら魚津署です。

お、除外認定はあくまで30日前の予告義務を外す手続きです。解雇そのものが有効かどうかは別に判断され、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効になります労働契約法16条)。認定が下りたことは、解雇が有効であることの保証ではありません。

給与・社会保険・雇用保険の事後処理

退職・解雇のどの出口でも、事後処理は共通です。ここで手を抜くと、後から未払いや手続き放置を指摘されます。

給与は、欠勤した日の分は就業規則の欠勤控除の定めに基づいて控除できますが(ノーワーク・ノーペイ)、控除の定めがない完全月給制などの場合は控除できません。そして欠勤前に働いた分は全額支払います「無断欠勤したのだから給与も払わない」は通りません。所定の支給日に、いつもどおり本人口座へ振り込むのが基本です。退職者から請求があった場合は7日以内に支払います。

社会保険と雇用保険は、退職日(自然退職の成立日・解雇の効力発生日)を基準に資格喪失の手続きを行います。健康保険・厚生年金は5日以内、雇用保険は10日以内が期限で、離職証明書も作成します。離職票の離職理由は失業給付の扱いに直結して争いになりやすいため、事実の記録に基づいて記載します。貸与物の回収、資格確認書(交付を受けている場合)の返却案内、住民税の異動届、源泉徴収票の交付までがひとそろいです。マイナ保険証だけを使っている従業員には、返却してもらう保険の券面はありません。

図4 事後処理のチェックリスト

  • 働いた分の賃金を所定支給日に支払った(欠勤分は控除)
  • 健康保険・厚生年金の資格喪失届を5日以内に出した
  • 雇用保険の資格喪失届と離職証明書を10日以内に出した
  • 離職理由を記録に基づいて記載した
  • 貸与物・資格確認書の取扱いと、住民税・源泉徴収票を処理した
提出先は社会保険が年金事務所、雇用保険がハローワークです。富山県内の管轄は窓口一覧確認できます。

ここは自社だけで判断しないほうがよい

よくある質問

何日待てば解雇できますか?
一律の日数は法律に書かれていません。行政通達は、原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し出勤の督促に応じない場合を、認定すべき事例のひとつとして挙げています。日数だけでなく、督促した記録と就業規則の定めがそろっているかで判断します。
無断欠勤の間の給与は払わなくてよいですか?
欠勤した日の分は、ノーワーク・ノーペイの原則により支払い義務はありません。ただし欠勤前に働いた分の賃金は全額支払う必要があります。退職者から請求があった場合は7日以内に支払います。
退職扱いにした後で本人が現れたらどうなりますか?
就業規則の根拠規定と、会社が連絡・督促を尽くした記録があるかが争点になります。規定がないまま退職扱いにしていた場合や、記録が残っていない場合は、退職の効力を争われる可能性があります。規定と記録がそろっていても、退職扱いが実質的に解雇と評価されれば、解雇と同じ有効性の判断(労働契約法16条)を受けることがあります。

今日から行う3つのこと

  1. 連絡・訪問の記録を、日時・手段・結果の形でひとつのメモにまとめ直す
  2. 就業規則の退職事由と解雇事由を開き、自然退職の規定があるかを確認する
  3. 欠勤が2週間に近づいたら、出勤の督促を配達記録の残る書面でも送り、次の一手を専門家と決める

当事務所のサポート

無断欠勤への対応は、初動の記録の取り方から、自然退職・解雇の選択、監督署への認定申請、資格喪失と離職票まで一続きです。渦中のご相談はもちろん、自然退職規定を含む就業規則の整備という予防の側からもお手伝いします。

参考となる公式情報

※ 制度は改正されることがあります。手続き・金額・期限などの詳細は、上記の公式情報や管轄の窓口で最新の内容を必ずご確認ください。個別の解雇の可否そのものは、事実関係により結論が変わります。

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