「通勤手当は非課税だから、社会保険の計算に入れなくてよい」と処理していませんか。給与ソフトの税区分と社会保険区分は別の設定です。非課税の欄へ入れたことで、社会保険まで対象外になっていないか確認しましょう。
この記事が役立つ方
対象通勤手当の支給と社会保険の届出を管理する事業主・給与担当者
困りごと非課税の定期代を社会保険の計算から除いてよいか分からない
読後にできること定期代を月額へ直し、支給ルール変更時に月額変更の確認を始められる
この記事のポイント
- 所得税が非課税でも、通勤手当は健康保険・厚生年金の報酬に含める
- 複数月分の定期代は、社会保険の集計では1か月分へ換算する
- 単価・支給率の変更と出勤日数の増減を分け、月額変更の要件を確認する
非課税かどうかと、社会保険の報酬かどうかを分ける
健康保険・厚生年金では、通勤手当を報酬に含めて標準報酬月額を確認します。所得税の非課税という扱いで、社会保険の報酬から除外されるわけではありません。現金で支払う通勤手当だけでなく、会社が定期券を渡す場合も対象です。根拠:日本年金機構「通勤手当は報酬に含まれるか」。
図1 同じ通勤手当でも、二つの制度で扱いが違う
所得税条件に応じて非課税
通勤方法・距離・運賃などを確認します。
非課税限度額は税務で確認 健康保険・厚生年金報酬に含める
現金でも、定期券の現物でも確認します。
所得税の非課税とは別の設定 この図の社会保険は、健康保険・厚生年金です。「非課税だから算入しない」と給与設定を連動させないようにします。
6か月定期代は、支給月だけに全額を載せない
6か月分をまとめて支払う定期代は、社会保険の報酬を確認するときに1か月分へ換算します。一括支給の月だけ72,000円を加え、ほかの月はゼロとする集計を避けます。
図2 6か月定期代は、1か月ずつに分けて集計
給与で支払う金額72,000円4月に、4〜9月分の定期代をまとめて支給。
社会保険で使う月額12,000円/月72,000円 ÷ 6か月。
一括の支払額↓対象の各月へ換算
4月12,000円
5月12,000円
6月12,000円
7月12,000円
8月12,000円
9月12,000円
基本給 260,000円 + 通勤手当 12,000円
= 報酬月額 272,000円
想定例:4〜9月を同じ経路で通勤、他の報酬なし。272,000円は報酬月額です。保険料の基礎となる標準報酬月額は等級表等で確認します。
給与の支給欄へ72,000円を載せる処理と、社会保険の届出に用いる月額換算は分けてください。ソフトごとに集計方法が違うため、給与担当者は通勤手当の支給周期を登録し、算定基礎届等の集計画面で、対象月へ12,000円ずつ含まれるか確認します。月額換算の取扱いは、日本年金機構の算定基礎届の案内に基づきます。
車通勤の支給額が変わったら、変わった理由を記録する
支給額が増減しただけで月額変更届を出すのではなく、単価・支給率等の変更があったかを確認します。例えば、会社が「1日当たり500円」を「550円」へ変えた場合と、単価は500円のままで出勤日数だけが変わった場合を分けます。他の固定的な賃金の変更も一緒に確認します。
図3 車通勤の増減は、単価と日数を分ける
単価が変わる500円 → 550円/日
会社が支給単価・支給率等を変更した場合。
固定的賃金の変動と、以後3か月を確認 日数だけ変わる500円 × 出勤日数
単価は同じで、出勤日数だけが増減した場合。
ほかの固定的賃金の変更も確認 想定の支給ルールです。転居・経路変更・在宅勤務への移行は、支給ルールと実際の働き方を合わせて個別に確認します。
随時改定は、原則として①固定的賃金の変動、②変動月から3か月の平均に基づく標準報酬月額と従前との2等級以上の差、③各月の支払基礎日数17日以上(該当する短時間労働者は11日以上)を確認します。固定的賃金と等級の増減の方向、上限・下限での例外もあります。根拠:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」。
給与担当者は、単価の変更を反映した給与月を管理表へ登録し、3か月分の給与が揃う月に確認予定を入れます。条件に該当する場合は4か月目の標準報酬月額から改定されます。詳しい確認項目は月額変更届の解説もご覧ください。
図4 月額変更は、単価変更だけで決めません
変更を記録単価・支給率などが変わったか。
最初に反映した給与月 →3か月を確認報酬の平均と支払基礎日数を確認。
一般17日/該当短時間11日 →等級を比較従前との等級差と増減の方向を確認。
原則2等級以上の差 →該当時に改定要件を満たす場合に手続き。
4か月目からの改定 一般的な確認順です。上限・下限等での例外もあります。支給額が増えただけで、必ず保険料が上がるわけではありません。給与設定・月額換算・提出済み届出を順に点検する
設定を直して終わらせず、過去の算定基礎届や月額変更届に影響していないかまで調べます。事業主は確認する担当者を決め、次の順番で進めてください。
- 給与担当者が、通勤手当の名称・通勤方法・金額・支給周期・対象期間を従業員別に一覧にする。
- 給与ソフトの社会保険対象設定を確認し、現金給与と現物の定期券を両方拾えているか点検する。
- 6か月支給者などを一人選び、届出集計へ1か月分ずつ反映されるか検算する。
- 算入漏れが見つかった人は、該当期間の届出控えと正しい報酬を並べ、訂正要否を年金事務所等へ確認する。
- 訂正が必要な場合は、保険料や給与への影響、本人への説明、精算方法を整理して対応する。
必要な資料は、給与明細・賃金台帳・通勤手当規程・通勤経路と定期券の対象期間・提出済みの算定基礎届や月額変更届の控えです。確認結果を「対象者/期間/誤った設定/正しい月額/相談先/処理日」の形で残すと、その後の対応を追いやすくなります。
従業員に伝える説明例
通勤手当は、所得税と社会保険で扱いが異なります。今回の6か月定期代は1か月分へ換算して、給与と合わせて報酬を確認しています。社会保険料は、今月の定期代にそのまま料率を掛ける計算ではありません。
自社の支給方法に合わせて使う文例です。問い合わせを受けたら、給与明細・通勤手当の対象期間・現在の標準報酬月額を並べて説明します。
ここは自社だけで判断しないほうがよい
資料を揃えて管轄窓口や社会保険労務士へ確認する場面
過去の届出から通勤手当が抜けていた標準報酬月額の訂正と保険料精算に影響する場合があるため、対象期間を確認します。
転居・在宅勤務で支給方式も変わった実費弁償か労務の対償か、固定的賃金の変動かを、規程と実態で確認します。
定期券を途中で払い戻した使用期間・返金・会社と本人の精算を整理し、各月の報酬への反映を確認します。
よくある質問
- 非課税限度額以内なら社会保険から除外できますか?
- 除外できません。所得税の非課税と、社会保険の報酬への算入は別の扱いです。
- 会社が現物で定期券を渡す場合はどうしますか?
- 通勤手当としての定期券も報酬に含めます。複数月分なら対象期間に応じて月額へ換算します。
- 通勤手当を変えたら必ず月額変更届が必要ですか?
- 必ずとは限りません。固定的賃金の変動、3か月の報酬、等級差、支払基礎日数等を合わせて確認します。
まず行う3手
- 給与担当者が、通勤手当の支給周期と社会保険対象設定を確認する。
- 6か月定期代などを一人分検算し、届出集計と突き合わせる。
- 漏れや支給ルール変更があれば、資料を揃えて訂正・月額変更の要否を確認する。
当事務所のサポート
通勤手当の給与設定と、算定基礎届・月額変更届の集計を合わせて確認したい場合は、現在の給与明細と通勤手当規程をご用意ください。みなの社会保険労務士事務所が、給与計算と社会保険の手続きがつながる運用を一緒に整理します。所得税の非課税判定など税務上の判断は税理士等と確認します。
参考となる公式情報
公式情報確認日:2026年10月3日。個別の届出や精算は、該当者の条件と管轄窓口の案内を確認してください。