夏の賞与シーズンです。賞与は「支給して終わり」ではなく、就業規則の定めと社会保険の手続きがセットになっています。支給前・支給後に確認したいポイントをまとめました。
この記事が役立つ方
対象賞与支給日を控えた中小企業の経営者・給与担当者
困りごと賞与規程、各保険料、所得税、5日以内の届出を一度に処理する必要がある
読後にできること支給前・支給日・支給後に確認することを分けられる
この記事のポイント
- 就業規則に「支給日在籍要件」と「業績による調整の定め」があるかを先に確認
- 賞与からも健康保険・子ども・子育て支援金・厚生年金・雇用保険の保険料と所得税が控除される
- 支給後5日以内に「賞与支払届」。賞与支払予定月を登録している月に不支給だった場合は「賞与不支給報告書」を提出
賞与実務は3段階で進める
支給前賞与規程、査定、支給日在籍要件を確認
→支給日社会保険料・雇用保険料・所得税を計算
→
決定・計算・届出を同じ日に詰め込まないようにします。
就業規則の賞与規定、この2点はありますか
1. 支給日在籍要件
「支給日に在籍する者に支給する」という定めです。この規定がないと、支給日前に退職した従業員から賞与を請求されるトラブルの原因になります。
2. 業績による調整の定め
「会社の業績等により支給しないことがある」という定めがあれば、業績悪化時に無理な支給義務を負わずに済みます。金額や計算方法を固定的に書きすぎないことも大切です。
賞与規程で確認する2点
支給日在籍要件支給日に在籍する人を対象とする定めがあるか
業績による調整会社業績等により支給額を変更・不支給とする定めがあるか
就業規則と実際の運用が一致しているか確認します。
賞与からも保険料が控除されます
賞与からは、健康保険料・子ども・子育て支援金・厚生年金保険料・雇用保険料と所得税が控除されます。健康保険料、子ども・子育て支援金、厚生年金保険料は「標準賞与額(1,000円未満切り捨て)」に各料率を掛けて計算します。標準賞与額には上限(健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1回150万円)があります。
支給後は「賞与支払届」を5日以内に
賞与を支給したら、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所へ提出します。この届出をもとに保険料が決まり、将来の年金額にも反映されるため、提出漏れに注意が必要です。
日本年金機構へ賞与支払予定月を登録している事業所が、その予定月に賞与を支給しなかった場合は「健康保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書」を提出します。予定月を登録していないすべての事業所へ、一律に不支給報告が必要という意味ではありません。
【具体例】賞与50万円から、いくら控除される?
従業員に賞与50万円(標準賞与額50万円)を支給する場合の、本人負担分のイメージです。
| 控除項目 | 本人負担の料率(目安) | 金額の目安 |
|---|
| 健康保険料 | 4.795% | 23,975円 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.115% | 575円 |
| 厚生年金保険料 | 9.15% | 45,750円 |
| 雇用保険料 | 0.5% | 2,500円 |
| 保険料の合計 | ― | 72,800円 |
※協会けんぽ(富山県)・一般の事業・40歳未満・令和8年度料率の例。料率は年度・都道府県・業種により変わります。このほかに所得税が源泉徴収されます。
額面50万円から上表の保険料を差し引くと427,200円となり、ここからさらに所得税が源泉徴収されます。会社負担は本人負担と同額ではありません。上表と同じ前提では、会社側に健康保険23,975円、支援金575円、厚生年金45,750円、雇用保険4,250円、事業主のみが負担する子ども・子育て拠出金1,800円がかかり、これらを含む会社コストは576,350円です。さらに業種別の労災保険料が加わるため、支給額を決めるときは加入制度と事業の料率で見積もります。
賞与50万円の計算例
本人控除健康保険23,975円、支援金575円、厚生年金45,750円、雇用保険2,500円
本人控除合計72,800円(所得税を除く)
会社負担を含む総コスト576,350円
2026年度・40歳未満・富山県・一般の事業等の前提です。
ここは自社だけで判断しないほうがよい
よくある質問
- 育児休業中の従業員に支給したら? 連続1か月を超える育児休業の期間中に月末を含むなど、要件を満たせば賞与にかかる社会保険料が免除されます。
- 賞与を支給しない年は? 賞与支払予定月を登録している場合、不支給でも「賞与不支給報告書」の提出が必要です。
今日から行う3つのこと
- 就業規則の賞与条項と今回の支給基準を照合する
- 対象者ごとに年齢・資格・前月給与・事業区分を確認する
- 支給日の5日後を賞与支払届の社内締切として登録する
当事務所のサポート
顧問契約では、賞与支払届の作成・提出も顧問料に含まれます。顧問契約のない方からのスポット依頼にも対応します。就業規則の賞与規定の見直しや、支給前のチェックもご相談ください。