5月の届出期限を過ぎてしまった。ベースアップ評価料は、もう来年度まで待つしかないのか——そう考えて手を止めていないでしょうか。実は、年度の途中でも届け出はでき、月末までに受理されれば翌月1日から算定を始められます。ただし、開始が遅れるほど算定できる月数は減っていきます。今から届け出た場合にいつから算定できるのか、そして1か月の遅れが何を減らすのかを整理します。
この記事のポイント
- 年度の途中でも届け出はできます。月末までに要件審査を終えて受理されれば翌月1日から、月初の開庁日に受理されればその月の1日から算定を始められます
- 令和8年度の算定期間は令和8年6月から令和9年5月までです。開始が1か月遅れるごとに、算定できる月数も1か月ずつ減っていきます
- 8月の報告は、その時点で算定していた期間だけが対象です。年度の途中から算定を始めた医院の次の報告は、令和9年8月になります
01年度途中でも届け出られます
結論を先に。受理と算定開始の関係は、年度の途中でも変わりません。
図1 届出から算定開始までの流れ
STEP 1届出書を提出する必要事項を記載し、医院名義で管轄の厚生局へ提出します。
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STEP 2月末までに受理される要件審査を終えて受理された日が、算定開始を左右します。
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STEP 3翌月1日から算定開始月初の開庁日に受理された場合は、その月の1日から算定できます。
この受理と開始の関係は、年度の途中でも変わりません。来年5月まで待つ必要はありません。
令和8年度は、改定年度の特例として当初の届出期限が令和8年5月7日から6月1日必着とされていました。この期限は令和8年6月からの一斉算定に向けたものであり、年度の途中で新たに算定を始める場合の届出には、この期限は当てはまりません。
令和8年度の算定期間は令和8年6月から令和9年5月までです。届出が年度の途中になっても、この算定期間そのものが動くわけではありません。
021か月遅れると、何が減るのか
算定できる月数がそのまま減ります。終期は令和9年5月で固定されています。
図2 算定開始月ごとの残り算定月数(令和9年5月まで)
算定期間の終期は令和9年5月で固定されています。開始が1か月遅れれば、残りの算定月数も1か月減ります。
2026年9月に届出書を提出し、月末までに受理されれば、算定を開始できるのは早くて10月1日です。ここからさらに届出が1か月遅れれば、算定できる月数も1か月少なくなります。
算定回数や職員構成が同じであれば、算定できる月数が多いほど、医院に入る評価料収入も、賃金改善に充てられる原資も大きくなります。届出を先延ばしにする理由がなければ、早めに手続きを進めたほうが有利です。
038月の報告はどうなるのか
報告の対象は、その時点で算定していた期間だけです。
図3 令和8年度の報告スケジュール
- 令和8年6月6月から算定を開始した医院令和8年8月に、6月・7月分の賃金改善状況を「賃金改善中間報告書」で報告します。
- 2026年9月今から届け出る場合月末までに受理されれば10月1日から算定を開始できます。令和8年8月の報告義務はありません。
- 令和9年8月年度途中から始めた医院の報告年度の途中から算定を始めた医院は、この時点で初めて賃金改善の状況を報告します。
令和8年度の改定で、翌年度への繰越規定はなくなりました。算定を始めた期間について、期限内に報告します。
8月の報告は、まだ算定を始めていない医院には関係しません。年度の途中で算定を始める場合は、算定開始月からの記録を、令和9年8月の報告に向けてそろえていくことになります。
04届出の前に決めておく3つ
届出書を書き始める前に、この3点を医院内で確定させます。
図4 届出前に決めておく3つ
STEP 01対象職員を確定する
歯科衛生士・歯科助手・受付、医療事務、歯科技工士などが対象です。開設者・管理者・法人の代表者・役員、40歳以上の歯科医師および医師、業務委託で勤務する方は対象外です。個人の医院では院長は開設者かつ管理者に当たるため、年齢を問わず対象外になります。
STEP 02賃上げの開始月を算定とそろえる
算定を開始する月と、実際に給与の引き上げを反映する月がずれると、報告のときに説明できなくなります。届出の前に開始月をそろえておきます。
STEP 03賃金項目を特定する
引き上げに使う基本給や、毎月決まって支払う手当の項目をあらかじめ決めておきます。既存の手当を減らして原資に回すことはできません。
この3点が固まっていないまま届出を進めると、受理後に賃金改善の記録と整合しなくなることがあります。
05すでに賃上げしていた医院は、高い点数を取れることがあります
継続的に賃上げを行ってきた医院には、通常より高い点数が設定されています。
図5 歯科外来・在宅ベースアップ評価料の点数(令和8年6月~令和9年5月)
| 区分 | 通常 | 継続的賃上げ実施施設 |
| 初診料等 | 21点 | 31点 |
| 再診料等 | 4点 | 6点 |
| 歯科訪問診療料(同一建物居住者以外) | 66点 | 107点 |
| 歯科訪問診療料(同一建物居住者) | 11点 | 21点 |
令和9年6月からは、初診料等42点・再診料等8点・歯科訪問診療料132点/22点(継続的賃上げ実施施設は52点・10点・173点・32点)へ引き上げられる予定です。
図6 継続的賃上げの水準(2つの職員グループ)
GROUP 01
事務職員を除く対象職員
歯科衛生士・歯科助手・歯科技工士など、事務職員以外の対象職員です。職種の振り分けは様式98の記載要領でご確認ください。
令和8年度に新たに配る率3.2%
継続の比較水準(令和9年度)5.5%(8.7%)
GROUP 02
事務職員
受付・医療事務などを含む事務職員です。
令和8年度に新たに配る率5.7%
継続の比較水準(令和9年度)8.0%(13.7%)
比較の起点は令和6年3月時点の給与体系です。判定は2つのグループそれぞれの改善額を合計し、必要な額の合計と比べます。一方のグループで基準を上回っていれば、その超過分でもう一方の不足を補うことができます。
継続的賃上げ実施施設の区分を、届出時点の感覚だけで判断すると、あとから比較水準を満たしていないことに気づく場合があります。令和6年3月時点の給与体系の記録を確認してから区分を決めます。
06ここは自社だけで判断しないほうがよい
院内だけで決める前に、賃金台帳や給与規程と照らして確認したい論点です。
図7 判断を誤ると届出や報告がやり直しになる4か所
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受理日が月末ぎりぎりになる審査に時間がかかり、受理が翌月にずれ込むことがあります。間違えると:算定開始がさらに1か月遅れ、その分の評価料収入と原資を取り損ねます
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院長を対象職員に含めてしまう個人の医院の院長は開設者かつ管理者に当たり、年齢を問わず対象外です。間違えると:対象外の人件費を賃金改善額に含めて、実績を過大に報告することになります
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継続的賃上げの区分を今の実績だけで判断する比較の起点は令和6年3月時点の給与体系です。間違えると:比較水準を満たさないまま高い点数で算定し、区分の見直しが必要になります
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事務職員とそれ以外の振り分けを誤る受付・医療事務を兼務する職員をどちらのグループに数えるかで、必要な改善額の計算が変わります。間違えると:2つのグループの必要額がずれ、区分の判定を誤ります
1つでも判断に迷う場合は、院内だけで決めず、届出の前に確認してから進めます。
ご注意
本記事は2026年9月13日時点の保医発0305第7号・保医発0305第8号、疑義解釈資料(その4・令和8年4月21日 別添2問1を含む)、東海北陸厚生局の案内をもとにした一般的な整理です。届出様式や運用は今後も更新されることがあります。実際の届出・報告では、算定を開始したい時期や医院の状況に応じて、最新の様式と管轄厚生局の案内を確認してください。
よくある質問
- 5月の届出期限を過ぎたら、令和8年度はもう算定できませんか?
- 令和8年6月からの一斉算定に向けた届出期限は過ぎていますが、年度の途中でも届け出はできます。月末までに要件審査を終えて受理されれば翌月1日から、月初の開庁日に受理されればその月の1日から算定を始められます。
- 今から届け出ると、いつから算定できますか?
- 届出書が月末までに受理されれば、翌月1日から算定を開始できます。審査に時間がかかり受理が翌月にずれ込むと、算定開始も1か月遅れます。余裕をもって提出してください。
- 年度途中から算定を始めても、令和8年8月の報告は必要ですか?
- 8月の報告は、その時点で算定していた期間が対象です。年度の途中から算定を始める医院は令和8年8月の報告対象にならず、次の報告は令和9年8月になります。
当事務所ができること
みなの社会保険労務士事務所では、歯科医院の賃金台帳・給与規程を確認し、対象職員の整理、継続的賃上げの区分判定、賃金改善計画・賃金改善中間報告書の作成支援まで対応します。届出書・報告書は医院名義で作成・提出いただきます。まずは現在の算定状況と、今から届け出た場合の開始月を一緒に整理するところからご相談ください。